一目惚れの心理
一目惚れというのは不思議な現象です。 相手のことを何も知らないうちに、一目見ただけで好きになってしまうのですから。
その人がどんな性格で、どんな趣味を持っているのか、などまったくわからないうちから、その人に好意を抱いてしまうのです。
まったく正体のわからない人を好きになってしまうというのは、よく考えてみると妙なことです。
なぜその人を好きになったのかと聞かれても、当の本人は答えることができないでしょう。
一目惚れした人がわかっているのは、相手の容姿だけです。
もちろん、外見の美しさに惹かれるというのはありますが、それだけではないはずです。
他に何かがあるはずです。
では、いったい何に惹かれたのでしょうか?
実は、一目惚れの場合でも、相手の人柄まで好きになっていることが少なくありません。
そこには「イメージの投影」という心理メカニズムが働いているのです。
たとえば、理想のイメージとして、背が高くて、スラリとしていて、知的で、優しくて、男らしい男性像を心の中に描いている女性がいるとします。
その女性が、たまたま背の高いスラリとした男性を目にして、好きになってしまうというのが一目惚れです。
実際にその男性が知的かどうかなど、この段階ではわかりません。 見た目のどこかに、自分の抱いている理想のイメージとの共通点を見つけると、相手にそのイメージのすべてを投影してしまうのです。
言うなれば、一目惚れとは「自分のなかの理想のイメージに恋している」状態のことなのです。
当然、後になって「思っていたものとは全然違っていた」と幻滅するのはよくあることです。 しかし、一目惚れしているときは好きだと思い込んでいますから、相手のことを冷静に見る余裕などないのです。
またこのとき、「感情の投影」という心理メカニズムも働きがちです。 「感情の投影」とは、自分が相手に対して抱いている感情を、まるで相手が自分に対して抱いているかのように錯覚してしまうことです。
実は好意を抱いているのは自分のほうなのに、その好意を相手のものと勘違いしてしまうわけですから、ますます自信を持って相手に接するようになり、より深く近づきあうきっかけをつくることができます。
そこで、気をつけなければいけないことは、仮につきあうきっかけが自分のなかの「イメージの投影」であったとしても、現実のつきあいのなかで相手を直視することによって、そのイメージをより現実なものに修正していくことです。
そうしなければ、現実とイメージとの落差が大きくなりすぎて、相手に興ざめしたり、必要以上の期待をしたりして、悲惨な結末を迎えることになってしまうのです。
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